魔女狩り 2

飛翔幻龍

 私は、驚いた。あの兵士、あいつにも私と同じような過去があったのか。
 私は魔女と呼ばれるそのたびに、恨みを募らせることしか知らなかった。それを糧に生きてくる事しかできなかった。そう、でもそれは、新たな恨みの連鎖を生む事に他ならないのだ。
 やっぱり、私は間違っていたんだ。
 私と、同じような過去を持つ人間が、こんなにもまっすぐな道を歩いているというのに。私は、・・・私は、一体何をしていたんだろう。
 やり直せるだろうか?
 いや、それはかなわないだろう。
 私は、あまりに多くのものを壊しすぎた。
 でも、やり直せるなら・・・・・・・・

―――――――――――――――――――――――― 銃声。

小市民

私は我にかえった。
銃弾が空気を引き裂き迫って来るのを感じた。
弾を潰したりテレポートしようにももう時間も力もなかった。
反射的に超能力で弾の軌道をねじ曲げようとする。
もう目の前まで弾が来ているのが魔女にははっきり見える。
危ない所で身をひるがえし、顔のすぐ横を弾が走っていった。

、、と同時に左頬に一筋の線が入り真っ赤な血が流れ落ちた、、

飛翔幻龍

 また、生き延びてしまった。
 自分でも、生きていたいのか死んでしまいたいのかよく判らない。
 暖かいものが左頬を伝っていく。それは顎のあたりで一度留まり、雫の形をとって、地面へと落ちて行った。
 頭の中で声がした。

―--生きていれば、やり直せる。その罪を償う事もできるんじゃないのか?今、そこで死ぬのは卑怯だぞ。
 私は顔を上げた。テレパシーの送り主のほうを見て軽くうなずいた。生きることに、決めた。
 飛んできた銃弾を力で包んで威力を消した。
 空を見上げた。夕焼けに染まって、真っ赤だった。

 俺達は、魔女の暗い色の瞳に光がさすのが見た気がした。魔女は少しこちらにうなずいて見せ、それから空を仰いだ。
 頬を伝った血が、赤い涙のようだった。
 声が聞こえた。

―--パンドラの、箱の底に、ただ一つ、残った希望。私は、見つけた。

  時枝優

そう、魔女はとうとう希望を見つけたのだ。
今まで探し求めていた希望を・・・

それからの魔女は生まれ変わり、今まで犯してきた罪を償う事にした。
でも、周りの人々の心の中には昔の魔女の姿しか残っていなかった。
どんなに頑張って罪を償っても誰も許してくれなかった。
でも、一生懸命頑張った。頑張る事だけが自分を止めていられる唯一の方法だったから。

真里亜

何年かたった。幾冬過ぎたことか。あいかわらず政府の魔女狩りは続いていた。抵抗勢力も今ではほとんどなくなり、街も人も憔悴しきっていた。いつまでこの疑心暗鬼の世の中が続くんだ!改革しなくては。。超能力者と普通の人間がともに生きる世の中を作るには、超能力者への弾圧をやめ、弾圧された超能力者たちの憎しみを取り除かくては。。
雪が降っていた。なにもかも、雪が真っ白に埋め尽くした。
そして、私は、覚醒したーーー。
けがれのない雪のなかから透き通るような声がした。
”メシアになれ。”
”お前は選ばれしもの、その名をこう名乗るとよいぞ・・・・



雪が降っていた。。
それは、クリスマスの前日イブの夜のことだった・・・

飛翔幻龍

―--イヴか・・・。

私は空を見上げた。
薄いブルーグレイ。何処からとも無く白い雪が降ってくる。
空を見ていると吸い込まれそうに感じる。
あの時の空は真っ赤だった。まるで人の流した血のような・・・
左頬に手を当てる。無意識に指先であの時にできた傷跡をなぞっていた。
声は続ける。
“マリア、と名乗るといい・・・。”

―--マリア

私はその名前を繰り返す。
確か聖書に出てきた名前だったと思う。
私はあまり詳しく知らないが、魔女という名前がどこかしら邪悪な含みを持つ名前なら、マリアという名前はそれとは正反対の、もっと何か綺麗なものを連想させた。
“お前には力がある。その力故にお前は疎まれたが、お前の力は苦難からの救済もできる。お前の力は諸刃の剣だが、お前には正しい使い方ができるだろう。”
今日はイヴだ。そう、救世主が必要だ。
私にできるだろうか。判らない。
でも、誰かがやらなければ。
そう、とりあえずは私が。
恨む事も、許す事も、私は、知っている・・・
私は、許せた。まだ傷は癒えないけれど。
指が無意識に傷をなぞる。
そう、傷は癒えないけれど。
恨み続けるだけではもっと傷は深くなるに違いない。

  今日はイヴだ。
そして、明日はクリスマスだ。

かな文字

「あぁ、あの兵士たちはどうしているのだろう・・・。」
マリアはそうつぶやく。
  雪は降り続いた。この町を白で塗りつぶすように・・・。あの日、  マリアは同じ事を思っていた。真っ白な自分に戻りたい・・。これ  まで犯した罪がこの雪で覆うことができたなら、彼女は静かに祈り  続けた・・・。

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カタン・・

教会のドアが開いた。
埃っぽい軍服、コートも着ていない、痩せているが背の高いがっちりした骨格の兵士が2人入ってきた。
入ってくると十字架の前で膝をつき、胸のクロスを手に目礼した。
そして、マリアの方を見た。
「やぁ。」
背の高いほうの兵士が声をかけた。
マリアは一瞬、目をうたがった。「・・・あ・・・」声にならなかった。あの兵士たちだった。ずいぶん、埃にまみれて、顔には深いしわが刻まれていたが間違いなかった。鷹のようなするどい眼差しは、あの銃撃戦のときと同じ光をたたえていた。澄んだ瞳だった。もう1人の兵士は、足を引きずっていた。きっとあの時の怪我のせいだとマリアは思った。

足の悪いほうの兵士が口を開いた。
「俺たちを呼んだだろ。思念を感じたんだ。」

マリアは、はっとした。テレパシーを使った覚えは無い。しかし、自分の念をこの兵士たちは感じたらしい。

教会でマリアはいろいろなことに思いをめぐらし祈り、救いを求めていた。仲間も欲しかった。それが、通じたのか。。

マリアは思った。

放射能と地雷に満ちたこのグラウンドを、緑の恵みに満ちた土に戻したい。
そのために、残された力を使いたい。しかし、1人の力で無理だ。仲間が必要だ。そう思った、念が2人に届いたのだろうか。

今は雪の下になって荒れた大地は微塵も見えないが、雪が溶ければ、焼け爛れた大地が姿を現すだろう。春になっても、豊かな緑にはえんが無い。人も大地も疲弊しきっている。雪がその醜さを一時的に隠している。

放射能と地雷を除去しなくては。その使命感をマリアは感じていた。
光あふれる緑の世界を取り戻さなくては。

兵士たちは、明るい瞳をマリアに向けた。
・・・手伝うよ。
心が聞こえた。・・・豊かな大地と真心は争いを浄化するだろう。そのために、超能力者は協力を惜しまないだろう。

さぁ、準備は整った。
3人は、世界の浄化のため思念を送った。3人の思念に応えて、生き残っていた超能力たちも自分たちの力を送った。 一心に力を送り、力を使い切った者達は、満足の笑みを浮かべて天に召された行った。

イブの夜に地球はだんだんと青い水の惑星にもどり、天使たちは楽園めざして羽ばたいていくのだろうか。。

マリアと2人の兵士達も自分の力を使い果たそうとしていた。

飛翔幻龍

パイプオルガンの音が聞こえる・・・
きよし・・・この夜・・・

その荘厳な音色に似合わない、可愛らしい旋律。
演奏台の上には小さな男の子が座っていた。鍵盤には触れずに、音を奏でている。所々つっかえたり間違えたりしながら。

・・・超能力者だ。

体が妙に軽い。私はその男の子の方に近づいていった。
ちょうど演奏が終わった。・・・静寂。辺りには誰もいない。
雨の降る音がただ静かに教会の中を満たす。
男の子はこちらを向いた。目が合う。男の子はちょっと首をかしげた。

―--おねえさん、幽霊?
・・・え?
―--違うなぁ。心が身体を離れちゃったの?
・・・これは夢だろうか?妙に体が軽いと思ったのは私が実体を持ってないからだと気が付いた。じゃあ、私は、死んだの・・・?で、この男の子には実体の無い私が見えている?
―--今、オルガンを引いてたのは君?
声は出なかった。男の子はテレパスの台詞が聞こえたらしい。ちょっと笑って小さく舌を出した。
―--うん。内緒だよ。ほんとは勝手に弾いちゃいけないんだけどね。また神父さんに怒られちゃう。
―--でも音は外に聞こえるでしょう?
―--へへっ。音は外には聞こえてないよ。教会の外には音の波が行かないようにしたの。ほら、音って空気の波でしょ?
―--超能力者なのね。
―--うん。ぼく、力の制御はクラスで一番巧いんだ!だからパイプオルガンが弾けるの。
―--クラス?学校で超能力を使って大丈夫なの?
男の子はまた首をかしげた。
―--大丈夫って何が?

雨の音が静かに・・・

雨?さっきまでは雪じゃなかっただろうか。
あたりを見渡す。そういえば、さっきまでいた教会じゃない。窓の外の風景も違う。違う、違う、違う・・・
―--おねえさん?

突然いくつもの風景が目に飛び込んできた。あれだけ力を使ったのに今、自分が力をフルに引き出しているのがわかる。それも苦も無く。
学校、超能力を持つ子ども達が制御の技術を学んでいる。
町並み、きれいな町が人々の笑顔が見える。
川、森、それに息づく生命、駆ける獣、飛ぶ鳥、泳ぐ魚、跳ねる虫・・・
生きている世界が、超能力者が差別されていない、その能力を生かせる世界が目の前にあった。

・・・これは未来だ。私は未来を見ている。未来!未来だ!!

マリアの顔には笑顔が浮かんでいた。そして目には涙が。 生き残った超能力者が教会へやってきた。天使を弔うために。 彼女が見た未来を知る由も無かったが、彼らは希望がそこに確かに存在する事を知った。

天使を弔うために来た者の数は知れない。

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