魔女狩り 1

飛翔幻龍

冗談きついぜ、ったく。
俺はひしゃげて使い物にならなくなったサブマシンガンを放り捨てて、近くの細い路地に飛び込む。
今のご時世、行政の輩はろくなことをやらないが、無計画惑星都市開発でできた抜け道は俺たちにはとてもありがたいものだった。
抜け道に隠してあった銃器の中から俺は狙撃用のやつを選んだ。それにしても、今暴れてる奴は相当強い念力を持っている超能力者だ。何しろサブマシンガンどころか無人戦闘機までひん曲げてたもんな。惜しいな。まあ、それゆえに狂っちまったんだろうが。
俺の退避している路地にもう一人息を切らせて飛び込んできた。
「・・・凄い超能力者だな、あれは。政府が魔女狩りをやりたがるわけがわかるよ。」
俺はそいつにライフルを放ってやった。
「俺にそれを言うなよ、それにお前だって魔女の一種じゃないか。」
「でも、そっちのほうが念力強いだろ。・・・それ、狙撃用のだな?」
「ああ。」
「やるのか?誘導を。超能力使って命中させてるって・・・」
「それしかないだろう。そうでなきゃ倒せない。それにもうだいぶ奴も傷を負ってるし、楽にしてやるなら早いほうがいい。こっちだって死傷者が増えるしな。」
「ばれたら今度は狩られる番だぞ」
「お前がフォローしろ」
「冗談じゃないぜ。俺が狩られる」
俺たちは、軍隊の中でも下っ端兵士だから抜けても誰も気付かない。一気に戦闘地域から離れて近くの高層ビルにテレポートした。
超能力者はその能力が強いほど狂う事が多い。狂うと見境無く念力を放出しまくり、ひどい場合は町1つを壊滅させる。というわけで政府は超能力者を見つけ出しては事故に見せかけるなりあくどい事をやって始末してきた。でもその中には放っておいても狂うほどの超能力を持っていない人間もいたし、また一般人もいた。


ほにゃたろう

「さぁ、早めにやっつけてしまおう。」
奴は、俺が渡してやった銃で、敵を狙った。
「・・・ちょ・・ちょっと待て!!」
俺は叫んだ。しかし・・・、
   バ〜ンッッ!
大きな銃声が鳴り響き、奴は地面に叩き付けられた。
「大丈夫か!?」
俺は奴に駆け寄った。奴は意識を失っていた。
「やっぱりな・・・。」
奴の遠くに落ちていた銃は粉々になっていた。
「敵は奴が狙っていた事を分かっていたみたいだ・・・。
  こうなると、俺達が狙われてしまう・・・。」
俺は奴を抱えて逃げようとした。


黒のワルツ

そして走り出した・・・がやはり案の定だった。
「俺達・・・完璧狙われてる。助かるかどうかも
分からないくらいだな。奴らを甘く見てたか・・・」
「あぁ。このままでは俺らものごとこの町を
破壊されかねないぜ・・・」
後ろから何かが追ってくる、と思ったのは気のせいか。
何度も振り向いたが誰もいない。これも超能力なのだろうか。
姿を隠しているのか・・・
しかし、奴らはふいに2人の頭脳に話しかけてきた。
「・・・抱えている奴をさっさと降ろせ
 さもなければお前は・・・・・・・・・・・・・・・・」


まりり

「!?」
いくら周りを見渡しても誰もいない。
やはり超能力なのだろう。
俺は気にせず走り続ける。が、何かが追ってくる気配や声はは一向に消えない
「・・・抱えている奴をさっさと降ろせ
 さもなければお前は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

この状態で降ろせというほうがむちゃではないか。
結局俺も殺すつもりなのか?


ほにゃたろう

俺は奴を背負ったまま、見えない敵にテレパシーを送った。
「何故、お前はこの街を壊滅させようとするんだ?
 お前が殺している人々は何の罪も無いんだぞ。」
辺りで響いていた沢山の銃声が一気に静まり返った。
「何だ・・・?」
そう思ったのもつかの間、俺の身体は何かに殴られた。
「ぐはぁっ!」
俺は倒れそうになったが、
背負っている奴が気掛かりで、必死に耐えた。
しかし、辺りには誰もいない。
そしてまた、敵は俺に話しかけた。
「・・・街は壊滅させない・・・。
 そのかわり、今度はお前らを殺してやろう・・・。」


飛翔幻龍

 衝撃波が来るのを感じた。血が騒ぐ。力が俺の周りで渦を巻き始めるのがわかった。俺も衝撃波を放つ。同時に二つの力を丸め込むように念力を放つ。よっしゃ、成功。
「お前は、超能力者か?!何故だ、何故狩られる側であるはずお前らが狩る側にまわるんだ!裏切り者!!」
俺は何か引っかかった。こいつは、ただ狂っちまって暴れてるだけじゃない。ちゃんとテレパシーでの会話が成り立ってるじゃないか。
 俺は軍隊に入ってからその能力ゆえに狂ってしまった超能力者を始末してきた。そういう奴はたいていテレパシーを送ってもまともな答えが帰ってこない。大抵ごちゃごちゃした思念、怒りや悲しみとかそんなものが絡んだ思いみたいのしか読み取れない事が多い。
「お前は、狂ってるわけじゃないのに何故こんなまねをするんだ?」
衝撃波。今度は砕いた。力の余韻が俺の頬をかすめた。血が流れるのが分かった。
「答えろよ!」俺は怒鳴った。
 その瞬間そいつは俺の目の前に現れた。わずか5、6歩の距離。
 そいつは俺と同じくらいの年だろうか。凄い力が周りで狂っているかのように逆巻いている。コンクリートや鉄骨の破片が禍々しく舞っている。黒ずくめの姿で、長い黒髪がギリシャ神話のメデューサさながらにうねっている。まさに、魔女がそこに立っていた。
「仇討ちだよ。」
暗く笑う。
「裏切り者に、邪魔はさせない。そっちも超能力者だね?お前らだって、何故魔女狩りに加担してるんだ?」
負荷がかかってきた。重力制御もできるのか、この超能力者は。
「俺たちは、超能力者であるというだけで、殺されるのはごめんだ・・・。」
「だから狩る側にまわったのか?」
さらに重力がかかる。
「話を聞けよ!」
俺は力を撥ね退けた。
「俺たちは、殺される必要のない超能力者を、逃がしてやるために、軍にもぐりこんでいるんだ!」背後で戦友が意識を取り戻す気配がした。


ほにゃたろう

奴は話を続けた。
「お前は・・・、何も罪のない人間を殺して何が楽しい?
お前みたいな超能力者がいるから、殺される罪の無い人がいるんだぞ・・・。お前は、人の命を何だと思ってんだ!!!!」
奴はそう言いながら、涙を流していた。
「俺の家族はな・・・。何の危険性もない超能力者なんだ!
なのに・・・、みんな殺されちまった・・・。お前みたいな魔女がいるから・・・、みんな、殺されちまったんだ・・・。」
魔女の顔は、無表情で奴の顔を見ていた。


黒のワルツ

(・・・ふ。暴れ狂う超能力者を排除するこの仕事を
続けてきたが・・・こんな感情がわき起こったのははじめてだ。
この体の奥底からわき上がるような怒りと悲しみ・・・)

魔女は少しずつ近づいてきた。
魔女「お前は・・・私の様な魔女がいるから家族・無実の
超能力者が殺されたと言ったな?」
「あぁ。そうだよ。超能力者がお前のように暴れたりしなければ
超能力者も普通の人間も共に平和に暮らせたんだ。
・・・なのに貴様等の行為によって・・・」
魔女「・・・ようするに。
・・・・・・・・・やはりそこまでした私を、魔女を、超能力者を
憎んでいたということだな。ふはは。皮肉なものだ。
しょせんお前から見たら私は憎き超能力者か!魔女か!」

魔女は本当に暴走したかのように笑い、消えた。
しかし、魔女の笑い声が離れた町から響いてくる。
{もしや・・・魔女はあの町に!?}
戦友「これ以上町を破壊させるわけにはいかんな。
・・・妙な誤解・気持ちがあるが奴を倒すことしかないのか?」
いろいろよ戸惑いながらもその町へ向かった・・・
近づくに連れ笑い声が強く響いてくるが・・・


飛翔幻龍

 私は、笑いが止まらなかった。ひょっとしたらもう狂気と正気の境目にいるのかもしれない。でも、それならいっそ、狂ってしまったほうがましかもしれない・・・。あの兵士、被害者ぶるのもいい加減にしてほしい。私だって、家族を殺されたのに!!
 私は先ほどの場所に戻った。私が生まれた町。
 私の母さんは、交通事故で死んだことになっている。でも、私はそうじゃないことを知っている。7つのときだった。私はまだ能力が目覚めてなかったから、政府のブラックリストには載っていなかったらしい。皮肉な事に母さんが轢かれた、その瞬間に私の能力は目覚めた。運転手の殺意が見えた。けれど、母さんを助けられなかった。どこからかその事が漏れたらしい。随分といじめられたし、町じゅうの人からつまはじきにされた。父さんと、妹は殺された。
 ・・・・・この町を、壊して、仇を取る。それだけを考えてた、私は間違ってた?あふれそうになった涙を乱暴にぬぐう。でも、今度は涙が止まらない。
 軍隊の連中がやってくるのが分かった。もう戦意がなかった。周りで舞っていた力の渦が弱まる。力が抜けて、片膝をついた。空を見上げた。黄昏の、赤い空。
 そう、だいぶ前から分かってた。仇を取るばかりではいけないのは。憎しみや悲しみは尽きないけれど。この連鎖は誰かが断ち切らなきゃいけない。だから、さっきあの兵士に罵られた時に、捨て台詞しか返せなかった。
 他に道を選ばなかった。だから、もう、悪あがきはしない。

    私は目をつぶった。


ほにゃたろう

過去の悲しい記憶が俺の頭の中をかすめていった。
母さんが殺された日。
同級生の罵声。
街の人たちの白い目。
妹と父さんの苦しそうな声。
俺の人生が今、走馬灯のように甦ってくる。
すべてを忘れてしまいたい。
何もかも、真っ白な自分に戻りたい。



[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析